占星術と統計

 占星術(astrology)は人類最古の学問であり、近代の初期までは正統な学問でした。しかし次項(占星術と科学)で詳細を書きますが、近代以降ある理由からアカデミズム界を追放されオカルト(隠された知恵)になってしましました。それによって人類の、とりわけ知識層からの認知度が極端に下がり、現在ではほとんどの人がその絶大な影響力を知らないまま、漠然と占星術を迷信などのイメージで捉えています。「歴史占星術の部屋」は占星術の知識を前提に書いているので、もし占星術が迷信、つまり嘘であればそれを使った私の考察も全て嘘ということになってしまいます。でも本当に占星術は単なる迷信に過ぎないのでしょうか。

 私はそれなりの年月占星術を趣味として研究してきましたが、学び始めた当初から今に至るまで率直に言って占星術が本物であることに全く疑いの余地が生じません。占星術で使うホロスコープは任意の瞬間の太陽系の天体配置を写し取っただけの図ですが、慣れればたった一枚のホロスコープから人間の精神活動の情報が大量に読み取れます。その情報はいつもとてもリアルに本質を突いてきます。しかしいかに大量でリアルな情報であっても、キャッチするというのは主観的な体験なので、それを他者とりわけ占星術に否定的な先入観を持っている人に理解して頂くのは簡単ではありません。

私は国家や人類全体を扱う分野の占星術にも強い興味を持って研究してきました。そして誰も気付いていない重要情報を多数発見し、それを発信するために「歴史占星術の部屋」を立ち上げました。とりわけ日本の近現代史の占星術的分析については最先端を研究していると自負しています。私なんぞが最先端なのは、この分野に着眼している人間自体が極端に少ないからですが、ともかく日本の歴史の謎を解き明かし、未来を左右する重要情報がまだ私の頭の中だけに大量にあることは事実です。それを私が頑張って「歴史占星術の部屋」に書き込み、その情報が必要なところに届き、日本にとって良い方向に活用されることを願っています。正しく活用されるためには、誰かれ構わず拡散して欲しいのではなく一定のリテラシーが保たれながら伝わっていくことが理想的です。従って逆説的ですが現在占星術に懐疑的な方にこそ、占星術と私の研究の両方を批判的に吟味して頂き、納得された場合は情報を共有して頂きたいと思います。

そのために「歴史占星術の部屋」だけでなく占星術自体のプロモーションもすることにしました。今回は占星術が客観的に証明可能かという点を整理しておきたいと思います。アカデミズムから追放された現代では占星術への知的リソースの振り分けが乏しいためにエビデンスも極めて少ないですが、統計学から代表的な研究を一つ紹介致します。次回は占星術がどうしてアカデミズムから追放されるに至ったかの歴史的経緯にも触れます。そして、次々回はビッグデータ活用によりエビデンスが一気に蓄積される可能性等についても述べたいと思います。

 

「占星術と統計」

前置きが長くなりましたが、今回は占星術を客観的に証明出来るか考察したいと思います。

まず占星術の真偽について私の考える結論を記すと以下のようになります。

「ひとの精神(内的なもの)と天体は常に密接かつ緻密に同調している。その意味では占星術は“真”である。同時にそれは外界にも反映されるが、どのように現れるかは多因子の影響を受けばらつきが出る。つまり内的な動機は外的に様々なバリエーションのある結果を産む。従って実際に具体的な予測をすれば個別には当たったり外れたりしているように見える。それでも大きな規模から傾向を読み取る統計の考え方を用いれば、天体と外的事象との間にも相関があることを示すことが出来る。」

つまり精神が天体と同調していることを確認するだけならホロスコープと内的なものとを一人で照合すればいいのですが、そこで当人がどれだけ密接かつ緻密な同調を目の当たりにしても主観である以上は証明しようがありません。ここでのテーマはあくまで天体と精神が同調していることを“客観的に”示すことですから検証可能なデータについて考えたいと思います。

ここで役立つのが統計学です。個別にみると一見バラバラなデータ群であっても大きな母集団として解析すると規則性が浮かび上がるのが統計のエッセンスです。ふたつの事象に相関があるのかどうかを検証するためには統計の考え方が有効なのです。

まず一般的な事象を例にして統計の基本的な手法を確認します。例えば喫煙と虚血性心疾患(心筋梗塞+狭心症)の相関、つまり「喫煙すると虚血性心疾患になる確率が増えるのか」を調べようとしたときに、個々の喫煙者や非喫煙者をバラバラに観察して、彼らがそれを発症したかどうかということを調べても何も結論は出ません。統計で事実を明らかにする最も基本的な方法は、喫煙以外の因子では偏りのない喫煙者群と非喫煙者群をそれぞれ大勢(数百から数万人規模)用意して比較し、それぞれの群での発症率の違いを調べることです。その際に当然どちらの群にも虚血性心疾患を発症したひとと発症していないひとがいることからも、個々の結果に着目することにはさほど意味がないことはご理解頂けると思います。全体として二群間の発症率に有意差(偶然では片付けられない差)があるかどうかを調べて初めて「喫煙は虚血性心疾患を増やすのか?」という命題に結論を出すことが出来ます。ちなみにこの命題に対する研究は沢山あり、どの研究でも概ね1日1箱の喫煙を続けると虚血性心疾患発症率は2~3倍に増えることが示されています。

統計はどんな命題に対しても応用出来ますから、主に精神世界を扱う占星術にも使えます。ここでは喫煙を天体現象、虚血性心疾患発症を人間の行動、に入れ替えてみましょう。色んな設定が可能と思いますが、例えば「出生図にAという天体配置を持つこと」と「Bという職業を選択すること」には因果関係があるのかという命題を設定するとします。それを統計学で調べるためには母集団からAに該当するひとを拾い上げて、その集団が対照群に対してBの割合が多いかどうかを調べます。AのなかにBのひともそうでないひともいるのは、喫煙者の中に心筋梗塞になったひともならなかったひともいるのと同じです。個々の当たり外れが問題なのではなく、Aの集団と対照群と間でBの発症率の差を見ます。

実際は一個人がそのように大規模な人数の出生データを集めて占星術を統計で調査するのはかなり大変だと思います。私もそうした地味な作業をするつもりはありません。しかし大規模な人数の出生データを集めて占星術を統計で調査するという地道(地味)な研究を実際にしてしまったひとは過去に何人かいます。なかでもフランス人のミシェル・ゴークラン(Michel Gauquelin, 1928~1991)の研究が最も有名ですので紹介したいと思います。

ゴークランは出生時間が判明している約5万人の出生データを統計で解析しました。その結果、火星や木星や土星の位置とスポーツ選手や政治家など特定の職業との間の相関を証明しました。これは火星効果(Mars effect)などと呼ばれています。

ゴークラン自身は占星術家ではなく心理学者・統計学者であり、証明した命題自体は占星術的にはごく素朴なものです。一人の出生図には辞書一冊分の情報が含まれるくらいに占星術は複雑なシステムであり、職業選択にはその構成要素のうちのかなり多くの因子が関わります。従って上記の研究のように出生図の一箇所だけを職業と結びつけることは個別に解析しているときは根拠が弱すぎるためにまずしません。喫煙者という情報だけで心筋梗塞を起こすと断言することと同様にナンセンスなことだからです。ゴークランの研究と喫煙と虚血性心疾患の研究の両者に共通していることは、ミクロに個々の事例を見ている限りは何も断定できないが、規模(n)を大きくして統計学的に処理する、つまりマクロに観察すると相関が見えてくるということです。私が「歴史占星術の部屋」に日経平均株価と天体の相関を示したグラフを載せたことも、facebook上で未来の日経平均株価の動きを占星術のテクニックを使って的中させるパフォーマンスをしたこと(これについては次々回のテーマ「占星術と未来予知」で詳しく取り上げます)も、マクロに観察すると相関がはっきりするという原理を利用しており考え方は共通です。

ゴークランの研究は、前述の辞書の例えで言えば厚い辞書のわずか数行を統計で裏付けたに過ぎず占星術の知的体系の掘り下げという意味ではそれほど大きな意義はありませんでした。設定した命題自体も私はさほど面白いとも思いません。ゴークランが利用した約5万人のデータには出生情報と突き合わせるために使えそうなパラメーターが職業くらいしかなかったという事情もあるかも知れません。占星術が近代以降にアカデミズムから追放されて以降、知的リソースの割り当てが極端に減ったために、そもそもこうした研究の絶対数が極めて少ないので贅沢は言えません。しかし今日ビッグデータ解析の環境が整いつつありますので、ここにスポットライトが当たればいきなり爆発的にエビデンスの蓄積が起こる可能性はあります。占星術は一義的には統計学のような帰納法からではなくて「数のロゴス」という宇宙の根本原理から演繹的に体系付けられるものですが、大量の統計学的データが出てくれば二義的にそれを補完することでしょう。いずれにしてもゴークランの研究単体では占星術の探求というところではほとんど役に立ちませんが、占星術を初めて大規模な疫学で裏付けたという意味ではセンセーショナルなものでした。そのため実際に大きな論争の元になったのです。

1976年にサイコップ(CSICOP、超常現象の科学的調査のための委員会)という国際的な反オカルト団体が設立されました。「超常現象や疑似科学に対して科学的な調査・批判」を行うことが団体の趣旨ということで、国際版「と学会」みたいなものを想像させます。CSICOPは設立時から占星術を最大のターゲットにしていたようで、ゴークランの論文はCSICOPが批判する最初のターゲットに選ばれました。ターゲットに選んだ時、もちろん彼らは占星術を迷信あるいは疑似科学と思っていましたから、ゴークランの論文を簡単に否定出来ると思って調査を開始しました。ところが調査を得た結果は彼らの予想に反してゴークランの論文が正しいことを追認せざるを得ないものでした。そこからCSICOPが混乱します。Wikipediaから顛末を引用します(現在は以下の引用部分は削除されているようです)。

《創立メンバーに含まれていた天文学者のジョージ・エイベルと同じくデニス・ローリンズ、および統計学者マーヴィン・ゼレンがこの案件に関する調査チームを結成し、ゴークランの説に関して詳細な検討調査を行った。そこまではよかったのだが、このチームは(彼らの予想に反して)、調査・検討の結果、ゴークランの説とほぼ同様の結論を得た。自分たちを正義の味方の十字軍のように思い、自分たちの行為を聖戦のように思いこんでいたCSICOP創立者たちの予想に反して、いきなり初戦で、相手のほうに分がある、という事態に直面してしまったのである。CSICOP内部では激しい議論が起き紛糾、組織内部で行っていた事実隠蔽に関する相互非難が起き、ニュージーランドのリチャード・カンマン、イギリスの懐疑派の重鎮とも言えるエリック・ディングウォールなどの有力メンバーの脱会が相次いだ(ゴークラン事件)。上記の案件の調査にあたったデニス・ローリンズも脱会することになり、雑誌『Fate(運命)』の1981年10月号において、ゴークラン事件の顛末についてスッパ抜き、次のように述べた。「オカルティズムの弾劾にたずさわる人々の信頼度には疑問を呈さざるを得ない。同誌編集者によって『CSICOPはいかなるイカサマをも辞さない徒党である。重要な調査ではヘマをやらかし、結果をごまかし、自分たちの失敗は隠ぺいし、真実を明かすと迫る仲間に対しては蹴りを入れる』と評されることになった。」》

これではCSICOPの目的が、占星術が真実かどうかを検証することにはなく、最初からターゲットである占星術を嘘と決めつけて攻撃・排斥することだったのは明らかです。だから調査結果が自分達の主張に沿ったものでなければ受け入れないばかりか事実を捻じ曲げることも辞さなかったのでしょう。ただし調査で明らかになった事実を事実としてきちんと受け入れて公表したメンバーもいたのは幸いでした。

CSICOPの混乱のようなことは人類史の至るところで起きていると思います。ある意味でCSICOPは人類全体の縮図のような気もします。占星術などの精神世界に属することを「科学的ではない」と言って否定することが現代的な正しい態度だと思い込んでいるひとは決して少なくありません。十把一絡げに嘘で片付けられるほど単純な問題ではないですし、そもそもその「科学的ではないから」という言葉には論理的に致命的な誤謬があるのです。その指摘も含めて、次回は「占星術と科学」というテーマで書きたいと思います。 

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