ここでは皇室の話をします。「元号図(元号のホロスコープ)」は日本では「憲法図」と並んで最も重要なホロスコープであり、その時代の設計図です。先に「昭和」と「平成」のホロスコープを経済面から比較することでそれが時代に強い影響力を与える一例を示しましたが、経済は全体の中の一面の事象に過ぎません。元号図からは経済面だけでなくその時代のあらゆる性質が読み取れます。「昭和」と「平成」では日本人のキャラクターも社会の空気も大きく異なるし、「大正」「明治」と辿ってもやはりそれぞれの時代毎に日本人のキャラクターも空気もかなり違っていました。突飛な着想に思われるかも知れませんが、そういう目で分析すれば、きっと納得して頂けるものと思います(具体的な説明はいずれします)。
ホロスコープはその事象が生まれた瞬間の天体の配置を写しとったものです。大正以降では天皇が崩御されると直ちに次の天皇が即位し、同時に改元されることになりました。そして新しい天皇が崩御されるまでは途中で改元されることはありません(一世一元)。つまり天皇崩御の時が次の元号の誕生であるために、その瞬間に新しい時代のキャラクターが決まり、新しい天皇の崩御まで数十年間続きます。例えば私は先の記事で「平成図には不況が刻印されており、それは基礎的な性質としては平成終了まで続く」ということを述べました。もちろん不況という経済面での評価は平成の多様な性質のうちのほんの一面であり、決して平成という時代自体を低く評価しているわけではありません。しかし良くも悪くも数十年の時代を決めてしまうという意味で天皇崩御は極めて重大なイベントだということはお分かり頂けるでしょうか。
ではここでその重大なイベントによって誕生した各元号のホロスコープをお見せします。「昭和」と「平成」は既出ですが、ここでは「大正」も一緒に並べてみましょう。
一枚のホロスコープには膨大な情報が詰まっているのですが、ここではまだ各ホロスコープを詳細に分析することはしません。その代わりにこれらのホロスコープの共通項に注目します。「平成(昭和天皇崩御)」以外の2つの図はいずれもオポジション(180度)のアスペクトを持っています。「平成」だけが例外的にオポジションを持っていませんが、実はこれはアノマリーなのです。オポジションは公的な性質を持つ出来事や人物のホロスコープに頻繁に見られるアスペクトです。日本中の誰よりも公的な存在である天皇には、もうこれは物凄い確率でオポジションが見られます。
昭和天皇崩御からたどること111日前の1988年9月19日。すでに膵癌の終末期にあった当時87歳の昭和天皇は、膵癌が十二指腸に穿破したことにより大量吐血され危篤状態になりました。それ以降、崩御までに計31,865ccのという尋常ではない量の輸血を含む延命処置が施されました。私は職業柄これまでに百例以上の終末期医療の経験がありますが、このように既に回復の見込みがない終末期の癌患者に対して臨終に向かうたび大量輸血で延命処置を施すというのは、おおよそ現在の医療現場の常識的感覚からはかけ離れた行為と思います。そうした常軌を逸する処置によって昭和天皇は衰弱しきった状態のまま延命され、結果的に実際に崩御されたのは1989年1月7日のことでした。その日オポジションはなく、元号図としてはアノマリーな図になりました。私はこれが昭和天皇の意志とは異なる時に崩御されたからに思えてなりません。9月19日の吐血から数日間のどこかが、昭和天皇の魂が定めていた「本来の寿命」であったのではないでしょうか。例えば昭和天皇吐血の一週間後の図はこのようなものです。
この辺りの前後数日間には太陽と火星オポジションが出現していました。このようにオポジションのある図であるほうが天皇制に関連した出来事としては違和感がありません。歴史に「もし」を言っても仕方ないように、もし「幻の平成図」が現実の平成図であったらどうだったかについて語っても仕方ありませんが、一言だけ言うと土星と天王星の合は土のサインに入っていないし月を巻き込んでもいないので、ここまで散々なデフレ型不況にはならなかったことでしょう。
次に近代以降の歴代天皇の出生図を並べます。
こちら見事に全ての図にオポジションがあります。錚々たるホロスコープ群です。
次に未来の天皇となる可能性のある出生図として、皇室典範に基づく皇位継承権1位から3位までの方の出生図を載せます。
秋篠宮文仁親王の図にはオポジションがありませんが、御次男であることにより使命感から幾ばくか解放されていることの表れかも知れませんし、実際に天皇を経験しないかも知れません。念のため断っておきますが、オポジションを持つことが天皇になることの絶対条件と言うわけではなく、それが無い天皇というのも勿論ありえます。しかし、天皇を始めとして公的意味合いの強い立場に立つものであればオポジションは是非とも欲しいアスペクトという事はできますし、実際にそうした人達はそうした図を運命的に引き寄せることが非常に多いのです。
当ホームページ「歴史占星術の部屋」が推薦する占星術教科書である『完全マスター西洋占星術 松村潔著』では2点が180度で対向する関係にあるオポジションの性質を以下の様に適切に説明しています。
「二個の感受点が180度で対向する関係にあること。ほぼ正反対の位置でにらみ合う形になるので、向き合った二つの感受点あるいは天体は、それぞれ相対した位置にある相手をターゲットとします。アスペクトを作る二つの感受点を、演技者と観客という関係で考えてください。演技者は観客の反応が直接わかるので、その勢いににのみ込まれてしまうと萎縮して何もできなくなります。反対に、観客の反応をダイレクトにつかみ、彼らの心を直接感じながらうまくのせることができれな、これほど盛り上がることはありません。この対象と向き合う働きこそ、オポジションの影響です。オポジションは、対外的な自己実現力を発揮するときにはどうしても必要なアスペクトとなります。出生図にオポジションのない人は、自分の目的を対外的に表現しようという意志に欠けるきらいがあります。たとえば、ずっと勉強しているのに、決して人前では明らかにしないなどということがよくあります。反対にオポジションが強すぎると、準備をしていないのに口にしてしまうとか、向かう相手がいないと何もできないということになりやすい傾向があります。(p.294-295)」
勿論、オポジションを構成する天体の種類等の違いにより上記の意味がどういう形で発揮されるかは異なります。例えば公転周期(黄道12サインを一周する時間)の早い天体の場合であればより小さい範囲で発揮され、公転周期の遅い天体であればより広い範囲で発揮されることになります。例えば皇太子妃雅子様の場合は最も公転周期の早い月(公転周期28日)と木星(同12年)によるオポジションなので、月の意味する私生活や私的な感情の範囲での話であり、身近なひとを「巻き込んでいく」作用です。昭和天皇の場合は天王星(同84年)と冥王星(同249年)という三番目と一番目に公転周期の遅い天体同士のオポジションなのであまりにも適応範囲が広く、周囲を巻き込むというよりは「世界を巻き込んでいく」現れ方をしました。天王星と冥王星の意味は破壊と創造であり根底的な社会変革が起きる組み合わせです。動乱の時代の昭和天皇らしいアスペクトですが、ここまで遅い天体同士だと本人のキャラクターということよりもっと集団意識に働きかける作用であり、昭和天皇自身が不穏な行動を起こしたわけではありません。
この「プロローグ編」ではまずは占星術ファン以外の方にも興味を持って頂くために、1枚のホロスコープを詳細に読むのではなく、元号図などからわかり易くてインパクトのありそうな一部の特徴のみを引き出して紹介しました。従ってまだそれらのホロスコープから読み取れる特性のうちの何百分の一を紹介したに過ぎません。日本の景気がどうなるかということはもちろん大事ですが、それすらもホロスコープが明らかにしている問題の一部に過ぎません。私は元号図や憲法図に、その時代の人々が直面するほとんどの問題の根っこがあることを突き止めており、それらは徐々に紹介していきたいと思っています。
追記:平成天皇が生前退位され、平成31年5月1日に譲位・改元が行われることが決まりました。この日、改元によって日本のキャラクターはモデルチェンジします。その日がいつかということは、日本人のキャラクターがどう切り替わるかを決めるため極めて重要な決定事項でした。同年の1月1日案、4月1日案と紆余曲折を経て最終的に5月1日に決定しました。廃案になった2つの日付にはオポジションはありませんが、最終的に決定した5月1日のホロスコープではきっちりと火星♂と木星♃のオポジションが出来ており、生前の譲位であってもオポジションの法則はしっかりと受け継がれました。
暦上は5月1日の0時の瞬間に改元が行われますが、5月1日の中で新天皇即位の瞬間が最も象徴的であり、新元号のホロスコープは即位の瞬間で作るのが適切と思われます。現時点では即位の時間が未定のためハウスや月の度数などはまだ決定出来ませんが、その他の多くの情報は充分に読めます。仮に午前11時として作成した新元号のホロスコープを下に示します(ハウスはまだ無視して読んで下さい)。
次の元号になれば平成の特徴は消失するのでデフレ型の不況は終わります。単に不況を脱するだけでなく、下の図を見れば日本経済が再び強い存在感を示すことがわかります。しかし、それ以上に多くの事象の変化が起こり、あらゆる分野で日本史世界史への影響も大きく変化します。大変興味深いホロスコープであり、書きたいことはいくらでもありますが、しばらくお待ち下さい。