昭和初期の不穏な時代をトランジットで分析する

 まずトランジットに関連する用語の整理をしたいと思います。占星術の話で太陽系の天体(月、水星、金星、太陽、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星など)が出てきたとき、それはネータル(出生)、プログレス(進行)、トランジット(経過)の3通りのことがありますのでご注意ください。

 ネータル(出生)・・・個人のホロスコープでも国家や組織や年号などのホロスコープでも、特定の瞬間(通常はそれが生まれた瞬間)を切り出してホロスコープにしますが、それを出生図と言います。例えば昭和が生まれた瞬間(1926年12月25日)には火星は牡牛座7度にありました。昭和図の火星というときにはネータルの火星のことを表します。ホロスコープでプログレスやトランジットと併記する時(三重円)は一番内側に配置します。

 プログレス(進行)・・・これは出生図から計算して割り出すのですが、いずれ出てきたときにあらためて説明します。ネータルやトランジットと併記するときは内側から二番目に配置します。

 トランジット(経過)・・・天体はいつも地球の周りの黄道近くのどこかにいますね。その瞬間に移動中の天体のことをトランジットと言い、ネータルやプログレスと併記する時はホロスコープの一番外側に配置します。

 私も3つのうちどれについて書いているかというのは適宜記載したいと思いますが、占星術に慣れている人同士のやりとりなら省略して文脈で判断していることも多いので、当ホームページの記載もくどくならない程度にしたいと思います。

 

 さて今回はトランジット(経過)の話です。トランジットとは現に運行中の天体のことですが、月、水星、金星、太陽、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星と遠くなるに従って黄道を1周するのにかかる期間が長くなります。例えば月は約28日で1周しますが、冥王星は約248年かかって1周します。ということは360度の黄道は30度の12サインに分割されるので、248÷12≒20ということで、冥王星は1つのサインを約20年くらいかけて通過していくことになります。トランジットというのはその時実際に運行している天体であり、地球上の全ての人間(実際は人間だけではないと思いますが)に影響を与えます。主には月から冥王星まで10個の天体がそれぞれの速度・軌道で運行していますから、10個の自然時計があるようなものです。そして軌道がより外側で周回速度がより遅い天体ほどより深い影響を与えます。

 冥王星は10天体のなかで最も遅く、最も深い影響を与えます。10天体がそれぞれの音を奏でるオーケストラの楽器だとすると、冥王星は最も低い音を担当し、まるで持続的に深く響く重低音のようにオーケストラ全体の雰囲気を支配しているのです。冥王星は1サインに約20年間留まるので、その時代の世界全体の雰囲気をそのサインの意味で根底から書き換えていきます。

 天王星は10天体のなかで3番目に遅く、1サインに約7年間留まります。従って時代の雰囲気を作る作用としては3番目に影響力が強いということになります。天王星はそれまでの社会に新しい理念を持ち込み、古い体制を打破しようする改革の天体です。古い理念や情感に囚われないため、離反したり独自な行動を取ることが多くなります。

 

 前置きが長くなりました。いよいよ対米開戦(真珠湾攻撃)に至るまでの時代の流れの占星術的説明に入りたいと思います。今回の主役はトランジットの冥王星と天王星です。まず下の図を御覧ください。

昭和初期の天王星と冥王星の動き(クリックで拡大)
昭和初期の天王星と冥王星の動き(クリックで拡大)

 図の縦軸はサインの度数を表していますが、天王星においては牡羊座♈の1度から30度までと牡牛座♉の1度から10度まで、冥王星においては蟹座♋の1度から30度までと獅子座♌の1度から10度までというように、縦軸の示すサインが異なっていることに注意して下さい。天王星と冥王星はそれぞれ黄道上を順行(度数の小さい方から大きい方に向かって進む動き)と逆行(順行の逆)を繰り返しながら波型に進んで行きます。天王星は1934から1935年にかけて牡羊座♈から牡牛座♉に移動し、冥王星は1937から1939年にかけて蟹座♋から獅子座♌に移動しています。この図に書き込んである事件一つ一つも全て占星術的に説明すると面白いのですがそれはいつかするとして、ここでは戦争に至る最も重要な二つの要点である「天王星と冥王星の90度アスペクト」と「冥王星の度数分析」に絞って解説したいと思います。