不穏な時代を準備した天王星と冥王星のスクエア②

 日本でのこの時代の大きな流れは満洲事変→満洲国建国→国際連盟脱退となります。

 満洲事変とは大日本帝国陸軍の満洲駐屯軍である関東軍が独断で起こした中国軍(張学良が司令する東北辺防軍)との軍事衝突です。関東軍は1931年9月18日に自ら経営する南満洲鉄道を小爆発させ、これを中国軍の仕業として軍事行動を開始(柳条湖事件)。この軍事行動自体が軍上層部の命令も閣議決定も経ることなく、関東軍の独断で開始されたものでした。さらには林銑十郎司令官率いる朝鮮軍(大日本帝国陸軍所属)が満洲に独断越境し関東軍の援軍となりました。満洲全域に45万いる中国軍(東北辺防軍)に対し、日本側は関東軍1万及び朝鮮軍1万と20分の1以下の兵力ながら、たった5ヶ月で満洲全域を占領してしまいました。軍事的には稀に見る成功でしたが、日本本国政府及び大元帥たる天皇の不拡大方針を何度も無視して独断専行(本国政府は事後承認)した満洲事変は、その後の歴史に以下の様な弊害をもたらしました。

1.出先の軍部が軍中央部の命令に従わず独断専行しても、結果さえ良ければ処罰されることはない、という風潮が拡がる。それが、軍部の暴走に拍車をかけた。

2.協調外交路線が崩れ、中国市場に関心を持つアメリカなど他の列強との対立が深刻化した。

3.満洲事変首謀者である石原莞爾の意図ではないにも関わらず、結果的に日中戦争→太平洋戦争と言う戦争のドミノ(最後には敗戦によって全て失った)のきっかけとなった。

 上は関東軍のネータルホロスコープ(関東軍司令部条例公布日から作成 時刻は不明なため仮に午前10時で作成)に、柳条湖事件の時のトランジット天王星♅と冥王星♇を重ねた図です。関東軍司令部条例公布日の現地時間0時から24時までに太陽は牡羊座♈の20.7度から21.68度まで移動しているため、関東軍のホロスコープの太陽は牡羊座のサビアン度数では21度か22度です。関東軍司令部条例が公布されたのが何時か不明なため21度か22度かは不明ですが、各サインの21度~23度はそのサインの特徴が最も強力に表れる場所ですので、いずれにしても関東軍の太陽は牡羊座の特徴である戦闘的活力や未知の課題への挑戦意欲が最も充実する度数にあることになります。さらに同じ牡羊座の火星♂と合であることも戦闘的キャラクターを強めており、いかにも軍隊らしいホロスコープになっています(個人のホロスコープであっても火のサイン(牡羊座・獅子座・射手座)に太陽や火星などがあるのは、軍人や格闘家などに定番の配置です)。ただ牡羊座は基本的に他者を意識せずに行動するサインであり、協調的な行動をとることには向いていません。個人のホロスコープであっても、こういったタイプは協調的な行動を取るのが苦手なひとが多く、周囲の顔色も伺わずに突然に事を起こして周りを慌てさせることがあります。こうした関東軍の独断専行なキャラクターは政府も軍上層部も天皇も持て余すことになります。

 

 この関東軍のネータルホロスコープの牡羊座の太陽と火星に対してトランジットの天王星が合(0度)、冥王星がスクエア(90度)でアスペクトを作って刺激をしたときに、関東軍は満洲事変を起こしました(上の図の外側がトランジット天体)。

 天王星と冥王星はともにトランスサタニアンに属しています。トランスサタニアンとは土星(サターン)の外側を周回する天王星・海王星・冥王星の3天体ことです。西洋占星術で使用する主要10天体のなかでも最も外側に位置する3天体になります。土星は規範意識や常識を表しますが、それを超えた位置にあるトランスサタニアンは土星的常識に全くとらわれていませんので、それを根本から打ち破る力を持っています。常識的な規範意識を超える大それた事件が起こる時には必ずトランスサタニアンが絡んでいます。関東軍及び後述する大日本帝国は、ともにこの時に二つのトランスサタニアンから直撃されていました。まずは関東軍について満州事変時のこの二つの影響を見ていきます。

 天王星はそれまでの社会に新しい理念を持ち込み、古い体制を打破しようする改革の天体です。トランジットの天王星からアスペクトが形成された時にネータルの天体は古い理念や情感に囚われにくくなり、離反したり独自な行動を取ることが多くなります。そのような性質を持つトランジットの天王星に触発されたことにより、関東軍は独自の判断に突き動かされて満洲事変を起こしました。

 一方の冥王星はトランスサタニアン3天体のなかでも最も外側の天体であり、最も深い変革力を意味しますが、この場合はネータルの太陽に対してスクエアという荒々しい過激なアスペクトで入っているため太陽という主体的な意志を非常に波風を立てるやり方で大転換させました。この場合の太陽は統治機構である大日本帝国政府及び天皇に投影されていたことを理解することがポイントです。この「投影」の概念は少しだけ難しいですがホロスコープの解釈において本質的な話ですので少々脱線して説明します。一般的に、太陽に対して冥王星が90度に入る時、太陽の意味する現世的な意志は折られる事になります。例えば、プロジェクトが頓挫する、ポジションを降ろされる、梯子を外される、下克上に合う、離反される、面子を潰される、テロに脅かされる、部下に舐められる、浮気をされる・・・等々。世界的事件から日々のワイドショーネタまで、このアスペクトのサンプルには事欠きません(その意味でこのアスペクトは占星術研究家の間で最も有名なアスペクトのひとつかと思いますがいかがでしょうか)。繰り返しますが、このアスペクトを要約すると「太陽の意味する現世的な意志を折られる」です。するとどうでしょうか。上の図のネータル図は関東軍のものなので、本来ならこの時に意志を折られるのはネータルの太陽に対してトランジットの冥王星からスクエアで入られた関東軍のはずです。しかし、実際に「意志を折られた」のは大日本帝国政府及び天皇でした。満州事変に際して、日本本国政府及び大元帥たる天皇は関東軍に対して何度も不拡大方針を指示して事態の収拾を図ろうとしました。しかしその度に不拡大方針は無視され、結局本国政府は関東軍の独断専行を事後承認する羽目になったのです。こういう面子の潰され方こそがこのアスペクトの典型的な表れ方です。太陽は政府などの統治機構を象徴しますが、関東軍は自身の太陽を政府に投影し、太陽への冥王星スクエア効果を政府のものとして現象化してしまったのです。実はこうした出方は意外と多いのです。例えばネータル太陽とネータル冥王星のスクエアはテロリストやテロ組織の定番アスペクトでもあります。テロリストの目的はターゲットとする政府の意志を折ることです。この太陽冥王星スクエアアスペクト衝動の太陽を外に投影すれば政府の意志を折るエネルギーにつながるのです。ヒトラーが第二次大戦を始めた時、ヒトラーの太陽にはトランジット冥王星がスクエアに入っていました。これを単純に読めばヒトラーの野望は直ちに頓挫するはずです。しかしヒトラーは太陽が冥王星に折られる現象をまずは被侵略国において現象化させることで、逆に破竹の快進撃を続けました。もちろん、テロリストもヒトラーも関東軍も太陽を100%外側に投影できるわけではありません。自身の中にもこのアスペクト的な危うさと破滅衝動を見て取ることが出来ます

 

 いずれにしても関東軍が満洲事変を独断で実行したことは、1920年代からの外交安全保障戦略を出先の一軍部が勝手に転換させたことを意味し、これら一連の行動は当時の陸軍中央の国防政策からも逸脱していた上、大元帥たる昭和天皇の許可なしに越境で軍事行動をした事は本来であれば死刑に処される程の明確な軍規違反でした。さらに満洲事変をきっかけに日本は国際協調路線と決別し、その後の日中戦争や太平洋戦争に至る日本の政治外交過程が大きく転換する契機となったのですから、一国の運命に与えたその影響は甚大でした。ところが結局のところ満洲事変の首謀者達は処罰されるどころかみな出世しました。それはマスコミを含む日本国民が関東軍の起こした満洲事変を熱狂的に支持していたからこそでしょう。それほどまでに関東軍の動きを時代の空気が後押ししていた理由を考察してみましょう。そのためには大日本帝国の図(帝国憲法図)を分析をすることが必要です。

 大日本帝国のネータルホロスコープに、柳条湖事件の時のトランジット天王星♅と冥王星♇を重ねました。この図から関東軍のみならず日本本体に対してもこの時のトランジット天王星と冥王星のスクエアのアスペクトが重大な影響を与えていたことが読み取れます。

 まず天王星についてですが、ネータルの天王星とトランジットの天王星とがオポジション(180度)で相対しています。同じ天体同士のアスペクトというのは、その天体の意味が過剰に強まります。天王星はそれまでの社会に新しい理念を持ち込み、古い体制を打破しようする改革の天体です。そして独立精神も表しており、意思決定に関して他者からの干渉を異常に嫌う性質があります。そもそもネータルの大日本帝国図においても天王星はグランドトラインの一角を担うという意味でキーとなる天体の一つであり、大日本帝国図が成立して以来、自主独立の天王星的価値観は日本人のマインドとしてとても大事なものだったのですが、この時期にはそのネータルの天王星にトランジット天王星が絡むことで天王星的価値観が過剰に強められることになりました。ネータルではソフトアスペクトであるトラインによる関わりだったので健全な自主独立精神でしたが、上の図のトランジット天王星はオポジションやスクエアなどのハードアスペクトとしての関わりが出てくるので、波風を立てながら天王星性質を発揮することになります。従って喧嘩しながら離反したり独自な行動を取る結果になりました。このとき我が国には満洲事変における関東軍の独断的な行動を許容するどころか熱狂的に支持する空気が形成されていました。さらに満洲事変及び満洲国建国に異を唱える他国による干渉を嫌い、日本は国際連盟を喧嘩腰に脱退し国際的孤立を深めたのです。そうした行動すら当時の日本国民は熱狂的に支持しました。

 続いて冥王星ですが、ネイタルとトランジットの2つの天王星にスクエア(90度)で入っています。古い理念や情感に囚われない改革の天王星に、現世的な価値観の外側にまで及ぶ最も深い変革力の冥王星が、スクエアという波風を立てるアスペクトで刺激するため、世相として破壊的な雰囲気を持った変革の時代を作ります。

 もう一つ注目すべきは、このトランジットの天王星や前述の関東軍の太陽及び火星がある牡羊座の後半度数と大日本帝国図との関連でカイトが成立することです(上図)。カイトと言うのは4点からなる複合アスペクト図形のことです。グランドトラインの一角に対してさらにオポジション(180度)の位置に第4の天体が入ります。すると残りの2点ともセクスタイル(60度)の関係となります。グランドトラインは特定の元素については不足なく構成されておりその元素内でとても順調に発展する複合アスペクト図形なのですが、一つの元素の価値観が強調されるぶん他の元素について無理解となる傾向があります。また120度というソフトアスペクトのみからなる図形なので平和な環境での順調な発展力はありますが、障害にあえて立ち向かっていく推進力の意味は持ちません。その点でカイトはある意味ではグランドトラインの欠点とも言える「一つの元素に閉じこもる」性質と「波風を立ててでも押していく推進力には欠ける」性質を克服した、非常に強力な複合アスペクトです。このケースで言えば風の元素(ネータルの太陽・月・天王星)のグランドトラインのエネルギーが火の元素(トランジットの天王星)の領域まで拡大して行きます。グランドトラインに対してカイトは非常にダイナミックな性質への発展形です。実際にカイトは歴史を大きく動かす強力な人物や組織や国のホロスコープにしばしば見られます。ネータル図形でカイトを形成している例としては、ナポレオン1世(下図)、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)、ソビエト社会主義共和国連邦、大日本帝国憲法+昭和図などがあります(大日本帝国図単独ではカイトはありませんが、昭和図の木星と海王星のオポジションが組み合わさるとカイトが形成されます。日本においては憲法図と元号図が車の両輪ですから、この二つの組み合わせには十分な意味があります)。カイトにはグランドトラインが持つ一つの元素に大して圧倒的に恵まれた資質ということだけにとどまらずに台風の目となって強引に世界史を塗り変えていくような力強さが加わることがこれらの例にも示されています。

 この時代の日本の場合は二重カイトとなり少し複雑なので整理します。まず1889年からの大日本帝国憲法図にはベースとなる風のグランドトラインがあります。太陽と月と天王星のグランドトラインであり、この恵まれた性質により官と民(太陽と月)が一丸となって世界史上で類を見ないほど短期間での近代化(天王星的なイノベーション)を成し遂げ、アジアで唯一の列強の仲間入りを果たしていました。大日本帝国憲法下の日本は風のサインのグランドトラインらしく視野は常に世界の遠くの国々にまで開かれていました(日本国憲法を基調とする戦後日本が米中韓といったしがらみのある隣国のみに関心が偏っているのと対照的です)。1925年に昭和に改元されることで昭和図が発生し、片輪が大正図から昭和図に入れ替わりましたが、その木星と海王星のオポジションは憲法図のグランドトラインと重なってカイトを形成しました(下図左)。このカイトは風のグランドトラインから獅子座の海王星に向かう流れを作りだすカイトです。もうひとつのカイトは風のグランドトラインから牡羊座に向かう流れを作り出すカイトであり、それが前述の関東軍の太陽や火星、あるいは満洲事変から国際連盟脱退に至る時代のトランジットの天王星が絡んだカイトです(下図右、再掲)。これらの二つのカイトはいずれも風の性質から火の性質への発展と風と火の間の相互作用を促すことになります。火の性質である創造的活力が刺激され、世界に向かっての挑戦意欲に満ち満ちてきます。どう転んでも地味に生きる性質ではありません。

 次はトランジット冥王星の影響の考察です。ネータルの天王星に対してもトランジットの天王星に対しても凶暴な色付けをしていたのがそれぞれにスクエア(90度)で入る冥王星でした。

 天王星と冥王星のスクエアが世相として破壊的な雰囲気を持った変革の時代を作ることは先ほど説明しました。土星という規範意識や常識を超えた天体(トランスサタニアン)なので土星的規範意識で歯止めをかけることは困難です。テロや軍事衝突などが起こりやすいですし、過激な思想を持った組織が台頭しやすい時代になるということを述べました。

 三度目の掲載になりますがこの図を御覧ください。青線(天王星)と赤線(冥王星)の重なり合う所がオーブゼロの完全なスクエアで効力の最強点ですが、重なり合う所だけではなく距離が近い所でも充分に効力が発生します。オーブが6度(6マス)以内であればかなり影響は強いと考えて良いでしょう。影響が強いということはこのスクエアアスペクトの影響から逃れ難くなる人が増えるということですが、より顕著に影響力が出るのはこのスクエアアスペクトにネータルの天体が絡んだケースです。

 前述のように大日本帝国や関東軍はネータルの天体がこのスクエアアスペクトと濃密に絡んでいるので、このアスペクトの影響下で変革的な出来事を立て続けに起こしています。まず、関東軍主導下で満洲事変が始まり、やがて大日本帝国そのものを巻き込んで世界的大事件となりました。このアスペクトの真っ只中において、満洲国建国への他国の干渉を嫌った結果、大日本帝国は国民の熱狂的な指示の中で国際連盟を脱退しました。その間には血盟団事件や五一五事件といったテロ事件が頻発しています。